「監視カメラ?マジで言ってるのかお前?」


タケシ先輩も慌てた声で尋ねる。


「名簿や成績表、個人情報の集まる職員室にだけ、何らかのセキュリティがあってもおかしくない。職員室で俺たちが捜索しているのが、見つかった可能性が高い」



“こちら啓一。警備員たちは4人ずつ、ふたてに別れて階段に向かいました”



まずい。
退路を塞がれるぞ。



「ミッションは中止だ!各自すぐに職員室を出ろ!永野の情報をよく聞いて、出来るだけ下階へ降りるんだ」



「マジでっ」

「見つかったら部活のレギュラーは?」

「その前に停学と丸坊主だよ!」


入り口近くにいたらしい3兄弟が、いの一番にバタバタと職員室を出て行った。


「うー!スリルハンパねぇ!面白くなってきた!!」


直紀は至って元気に、軽快に、軽率に、扉を飛び出していった。いいねェ、バカは気楽で。



さすがに全教科奪取は無理だったな…残念だけど、ここは退散だ。みんなを停学や丸坊主にしてまで貫く信念は無い。


東條さんは、別の方法で助けよう。もう嫌われちゃったと思うけど。



「ん…アリサ?おーい、アリサっ」


アリサがいない。アレ?もう逃げたのか?



全然気づかなかったけど、すごい逃げ足だな。まァ、あの運動神経だ。捕まりゃしないだろう。