黙って目を覆ったまま身体をソファに預けている。

目に見えて分かる疲労の色、サルスは私室外では少しの疲れを見せない代わりに部屋の中では電源が切れたように動かなくなるのだ。

カルサの代わりとなってから切れる事無く続く激務、どこから力が湧いてくるのか、あれからサルスはひたすらに走り続けている。

でもそれは事情を知る人間には見るに堪えない姿だった。

「あんな、サルス…。」

紅が何か言いかけたとき、部屋に来客を知らせる音が響いた。

「リュナです。」

その声にサルスも紅も身体を小さく揺らした。

動けないサルスの代わりに紅が扉を開けに近付き、その境界線を取り除く。

「あら、紅！」

紅の顔を見た瞬間、リュナは弾けるような笑顔を見せて彼女を迎えた。

「カルサならおるで。」

紅の言葉にリュナは彼女の肩越しに室内を覗きこんだ。

「入りますね。」

可愛らしい声の主が境界線の中に軽々と入ってくる。

その手にはポットとボウル、そしてタオルが準備されていた。