ただ貴未には気になるところがあった。

あの時、瀕死のナータックが消えそうな声で何度も呟いた言葉の意味は、彼が回復しないかぎり解決されそうにもない。

「陛下、ちがう。か。」

「なんや?」

「ナータックさんがずっと呟いてた言葉、なんか気になっちゃってさ。」

ナータックは一体何を伝えたかったのだろう。

カルサの何が違うというのだ。

聞きたくても彼は未だ意識が戻らず、常に看護を必要としている状態だった。

答を聞ける訳がない。

そして伝えるべき人物も、今のところ見当たらないのだ。

「悩んでてもナータックさんが起きんかぎり解決せんねや。せやったら、おいとくしかないやろ。それより気になるんは…。」

カルサの状態と行方、そしてサルスの行動の意味。

三人の頭の中に浮かんだのは同じことだった。

胸に突き刺さった剣、普通ならば命はない。

しかしあの時確かに、あの侵入者と戦っていた女性は言った。

《その剣は封縛》