もしかして、という思いで呼んでみたが空振りだったらしい。

リュナは恥ずかしくなり照れながら俯いた。

ぽりぽりと頭を掻いて自分を助けるように呟く。

「いる訳ないか。」

「何か用?」

「きゃあっ!」

ふいに背後から千羅の声がする。

リュナは悲鳴をあげ勢い良く後ろを向いた。

真後ろで不思議そうにリュナを見ている人物は紛れもなくその人だ。

「せ…んら…さん。」

全く気配を感じさせない辺りが流石というべきか、リュナは驚きと納得を一気に体験した。

「おはようございます。すみません、迂闊に呼んでしまって。」

「冷やかしか?そんな暇じゃないんだけどなぁ。」

「す、すみません!」

千羅の言葉にリュナは深々と何度も頭を下げた。

千羅は予想以上のいい反応に高らかに声を上げて笑う。

「いいって!本当にいるか確かめたかったんだろ?…カルサから色々聞いたみたいだな。」

リュナは頷いた。