私は好きなの!⇔オレを見ろ!

 その乾杯とほぼ同時くらいに雪奈と紗耶は店の中に入り、裕也たちが座っているところに背をむけて座る。


「いい席あったね、裕也のやつ誰にも相手されてないし」
「え、ええ…、山元君…モテモテね」
「まあね。裕也とかにいく物好きはいないでしょう」
「物好き…ね、私は気には…なっているんけど」
「・・・・・」


 美人な紗耶の意外な一言に雪奈は驚きを隠せない。


「それより川口さん…、あまりチラチラ見ると怪しまれるから…、カメラの用意…」


 雪奈たちは演劇部から借りたカメラを上手く隠し、裕也たちの様子をカメラ越しに確認した。


「なるほど。これならあまり怪しまれないし、裕也のマヌケ面も見れるってわけね」
「…そうね。…ちょっと…ごめんなさい」


 すると紗耶はおもむろに立ち上がり、裕也たちがいる席の奥にあるお手洗いの方に向かった。