私は好きなの！⇔オレを見ろ！

「行こう」
「ちょっと…待って」


　席を急に立った雪奈を無理矢理座らせ、反動で尻餅をついた。


「痛、何すんの？」
「ごめんなさい…、だけどいきなり入っても…」
「もう始まっているでしょう？」


　雪奈はこの店を今でも飛び出して向かいの居酒屋に行くようなほど、落ち着きがない。


「山元…君見なかったよね？」
「え？そういえばいなかったような…、でも先に入ったんじゃない？」


　紗耶はこの店に賢一がいる事を告げようとしたが、先ほどの不審な行動が妙に引っ掛かる。


「多分だけど…遅れているんじゃない。山元君経由だから先に行く…理由は…」
「そうなんだけど、いち早くマヌケ面を」
「ねえ…そんなに焦ったら…」
「・・・・・」
「いえ…、行きましょうか？」


　雪奈はどうしていいかわからず、動けなかった。