二人は道中、いつもみたくたわいもない会話をした、賢一の事以外は。ゆっくりゆっくりと大学の正門がある方に歩いていく。


「あれ、瞳ちゃんじゃない?」
「え・え・え……本当だ、真中さんだ」
「おいおい真中さんって、いい加減下の名前で呼んでやれよ」
「な・な・な慣れているし…」
「そういう問題じゃないっつうの」


 裕也は海斗が先に彼女が出来た事に嫉妬したようで、肘で何回も何回もしつこくつく。


「よっ、瞳ちゃん」
「宮本君、お久しぶりだね」
「最近お二人はお忙しいみたいだね」
「…うん、まあ色々あってね」
「もしかしてラブラブなおデートかな?」


 裕也はニヤニヤと二人を見たのだが、海斗と瞳には笑顔などどこにもない。


 むしろどのような表情をしたらいいのかわからないって顔をしている。