私は好きなの!⇔オレを見ろ!

 慣れない地形に暗闇、時間が進むごとにどちらへ行けばいいかわからなくなり、次第に体力も尽きてきた。


「…どこにいるんだ…、ん?この声は…」


 裕也は虫の声とともに自分の名前を呼んでいるような音が聞こえる。


「この声は賢一だな」


 裕也はその音を頼りに道なき道を歩き、小枝を途中何本も踏みながら歩み寄った。すると、賢一は徘徊しているように裕也の名前を連呼。


「賢一!」
「……裕也?帰ってきてくれたのね!」


 賢一の目は正気を戻したみたいで、輝き出す。


「もう大丈夫、私があの女から守ってあげる」
「賢一…、聞いてくれ。ビリヤードの約束覚えているよな?」
「もうそんな事どうでもいいわ」


 賢一は神経は正気に戻ってはおらず、裕也は思わずためらったが、諦めようとはしない。