私は好きなの！⇔オレを見ろ！

「まずは材料を洗って。切るのはオレがする」
「賢一、やっぱり紗耶ちゃんだけで…」
「男ならガタガタ言わない」
「はいはい」
「はいは一回」


　いつもは温厚な賢一が豹変した事に戸惑いずつも、裕也は指示されたとおりに動く。


　裕也は毎日自炊しているとは言え、賢一のスピードにはついていけていない。


「じゃあ次は野菜を炒めて」
「…はい」
「それから肉は味付けをしてから…」
「あ、ちょっと待って賢一、何かオレ邪魔じゃない？」
「そうか？オレは裕也が必要だけど」
「・・・・・」


　料理の腕は雲泥の差が明らかで、全く無駄のない賢一に対し、裕也は誰の目から見ても、足でまといになっている。


　ここまで賢一に差があることに裕也は自分の惨めさに落胆するしかなく、雪奈のときは違う意味で泣きたかった。