ーーー……。
「……!」
「……葉月…」
誰か、呼んでる?
「葉月…!」
この声…南と葵…?
「葉月!」
ハッと目が覚める。
俺、いつの間にか寝てたのか…。
そういえば、南と葵の声がしてたような…。
「葉月…!」
「うわっ!」
ガバッと隣から勢いよく誰かに抱きつかれる。
な、何!?
そっちに首を曲げると、南と琉衣がベッドの隣に立っていた。
ってことは、この抱きついてるのは葵?
「てか、苦しい…」
「あ、ごめん!」
抱きついていた拍子に、首をしめていた葵が謝りつつ離れた。
「ゴホッ、何で葵たちがここに…」
咳をしながら体を起こす。
「何でって、琉衣から聞いて…」
あぁ、そういえば連れてくるって言ってたっけ?
…それはそうと…。
「何で葵、泣いてるの?」
今思ったが、葵は何故かうるうると涙を流していた。
琉衣は平静な表情なのに、南まで深刻そうな顔をしている。
何かあったのか?
「だって琉衣から葉月が倒れたって聞いて…。
急いできてみたら葉月目つむって寝てるし…。
大丈夫?」
「え、あ、うん…」
倒れた?
俺が?
何でそんなウソを…。
「はぁ、マジで俺も焦ったわ。
葉月が倒れるなんてウソだろって思って来てみたが…まさか本当だとは…」
あー…ごめん、南。
本当はウソなんだ…。
まぁ、いまさらウソでしたって言うのもなんかめんどくさくなりそうだし…ここは話を合わせるしかないか。
「悪い、心配かけて。
ただの寝不足だから、そんな心配はいらないよ」
「ホントか?
辛かったら早く言えよ?」
「うん、ありがと」
「あのね、葉月が倒れたって聞いた時、もしかしていなくなっちゃうんじゃないかってすごく怖くなったの…。
でも、無事で良かった~」
「怖くなった?」
「うん、だって私は葉月がいなくなるなんてこと、絶対イヤだもん。
ね、南?」
「あぁ。
葉月は俺たちのオカンでもあり、幼なじみでもあるからな。
これからも一緒だ」
「南…葵…」
「ちょうど放課後だし、みんなで帰ろっか。
私葉月の鞄とってくるよ」
「あ、俺も行く」
二人は俺の鞄を取りに、出て行った。
「……」
「どうだった?
葉月くんはいらない存在じゃないってわかってくれたかな?」
「うん、身に染みるほどわかったよ…」
二人があんなにも俺のことを思ってくれてたなんて…。
一時でも、俺のことをいらないと思ってるんじゃないかって疑ってしまったことが恥ずかしい…。
「信じてあげたらいいんじゃないかな?
だってずっと一緒にいた幼なじみなんだからさ」
「そうだね…」
俺は何をうじうじ考えていたのやら…。
ちゃんと二人には必要とされていたじゃないか。
それがわかっただけで十分だ。
「ありがとな、琉衣」
「う、ううん…」
微笑んで言う俺に、琉衣は顔を赤くしてうつ向いてしまった。
何か、可愛いな…。
「あの…」
「お~い、帰ろ~!」
琉衣が何かいいかけた時、扉が開いて葵の声がした。
「今行く!
で、何言おうとしてたの、琉衣?」
「う、ううん、何でもない!」
「そう?」
「うん。
…また今度でいっか…」
「ん?」
「ううん、行こっ」
「うん」
ベッドから下りていたから、琉衣が小さく呟いた言葉は聞こえなかった。
END



