【南】


無事、外へ出ると葵は


「じゃ、ハチマキ葉月に渡してくるね」


と言って行ってしまった。


…てゆーか…。


うわー、俺葵と付き合うことになったんだよな?


葵の彼氏になったんだよな?


…ヤバイ。


嬉し過ぎて死にそう…。


手で口元を押さえるが、どうしてもニヤけてしまう。


「どうしたの、南くん。
顔真っ赤だよ?」


「いや、これはっ…!」


ヤバッ!


琉衣が隣にいることを忘れてた!


「な、何でもない!」


「ホント~?
…ところで…」


「ん?」


琉衣が何か耳元で呟いてきた。


「あおちゃんと二人で教室にいて、何か進展あった?」


「は、はぁ!?」


俺があまりにものけぞってキョドったせいか、琉衣は何かを読みとった。


「あ、やっぱり何かあったんだ?
まぁ、教室に二人でいて何もないなんて、つまんないよね」


二人って…。


現にお前は教卓の中にいたんだから、あそこにいたのは三人だけど。


まぁ、そんな細かいことはいっか。


「で、何があったの?」


「それ聞くのかよ…」


「まぁね。
いいじゃない。
私はもう南くんがあおちゃんのこと好きって知ってるんだから」


「…まぁいいけど…」


ポリポリと頬をかく。


誰かにこれを言うのも結構はずいな…。


「葵と…付き合うことになった」


さて、どんな反応する?


「あ、やっぱり?」


琉衣笑は顔でそう言った。


えっ…。


あれ…?


思ってたより反応…薄!!


「え、もうちょっと「そうなんだ!?」みたいなビックリすると思ってたんだが…」


「え~?
いや、はたから見て二人とも何か嬉しそうに見えたから、そうなのかな~って」


あの短時間で!?


すごい観察力だな…。


「まぁでも、おめでとう。
良かったね!」


「あ、あぁ…。
ところで、琉衣はどうなんだ?
その後例の人と何かあったか?」


「ん~、特にはいつも通りなんだけど、
でも前よりは近づけたと思う」


「そっか」


そういえば琉衣の好きな奴って誰だ?


「なぁ、琉衣の好きな奴って…」


「秘密♪
でもヒントをあげるなら、いつも南くんとあおちゃんの側にいる人。
かな」


俺と葵の側にいつもいる人?


…それって…。


「今の大ヒントだったかな?
あっ、南くん、私たちもファイヤーのところ行こっ」


「おわっ!」


腕を引っ張られて無邪気に笑ってる琉衣とファイヤーの近くに行く。


そうか、琉衣の好きな奴はあいつか…。


がんばれよ、オカンは人のことにはよく近づくけど、自分のことになるとうといからな…。