屋台で綿菓子とりんごアメを買ってもらった私は、すごく嬉しそうに食べていた。
『たくっ。
そんなにほうばって食べてると太るぞ』
『うっ…。
べ、別にいいもん。
その時は南か葉月に責任とってもらうもんね~だ』
『何だよ、責任って?』
『お嫁さんにするってことじゃないかな?
僕は葵が相手なら喜んで責任とるよ』
『なっ…!
よ、嫁!?
誰がこんなちんちくりん!』
『ひどい!
いいもん、私だって意地悪な南より葉月の方がいいもん!』
ぎゅっと葉月の腕にしがみつく。
すると南は一瞬険しい顔をした。
けどすぐにそっぽを向き
『ハハ、葵を嫁にする葉月は毎日が大変過ぎて過労死するかもな』
冗談混じりに軽く笑った。
『何それ~、私がとろくさいみたいな…』
『実際そうだろ?』
『も~、怒るよ~!』
『すでに怒ってんじゃねぇか!』
拳を挙げて逃げる南を追いかける。
それを見て葉月はただ笑っていた。
それから…。
南は射的をして、葉月は金魚すくいをした。
この時からだろう…二人が上手くなったのは…。
『…何かみんな移動し始めたね』
『きっとそろそろ花火が始まるんだよ』
『んじゃ、俺たちもそろそろ移動しようぜ』
他のお客さんにならんで、私たちも花火が見える場所へ移動していた。
すると…。
『あっ…南、葉月!?』
人の波の中に入って、二人と少し離れてしまった。
人を掻き分けて急いで追い付こうとする。
けど、二人の姿は次第に人で消えて行ってしまった。
『南…葉月…』
呼んでも来てくれない。
当時の私はまだ小さかったから、大人もでかく感じて、一人でいるのがすごく怖かった。
『う…うぁ…』
怖くてどうすればいいのかもわからなくて、涙が溢れだしてきた。
お祭りで迷子になるのは今回が初めてだった。
不安で、暗くて、何処に行けばいいかもわからない私は泣きながら一人、歩いていた。
そしてたどり着いた場所が、神社の倉の階段だった。
ここで二人を待とう。
そう思い階段に座る。
きっと探してくれる。
けど…このまま見つからなかったらどうしよう…。
そんな不安にかられ、泣き止みかけていた涙がまた溢れてきた。
うぅ…。
真っ暗だし、何か木はバサバサいってるし…怖いよ…。
南、葉月。
私はここだよ…早く見つけて…。
涙を拭っていると、遠くの方から
『…い。』
『……おいー』
『葵ー!』
私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
そしてその声はだんだん近づいて来て…。
『葵ー!』
倉より少し前にある階段から、汗だくで息を切らした南と葉月が登って来た。
私を見るなり、『葵!!』と叫んで二人ともギュッと私を抱きしめてきた。
『バカ。
心配したじゃねぇか…』
『南の言う通りだよ。
すごく心配したんだから…』
『うぅ、ごめんね、二人とも。
見つけてくれてありがとう…』
ギュッと力を込めてだきあうと、南は体を離し
『たくっ。
これじゃ、いつか俺まで過労死するかもな』
嫌味たらしく笑う南に、私は怒るのも忘れて一緒に笑った。
葉月も、笑う。
そして、笑い合う私たちの上にはキレイに輝く花火が上がっていた…。



