【葉月】
「あっ、南ちょうどいい所にいた」
「あ?
なんだ、葉月じゃん。
葵と一緒じゃないのか?」
先にキャンプファイアの元に来ていた南を見つけ、声をかけると南は葵も一緒だと思ったのか、キョロキョロと見回していた。
「葵にはちょっと教室の忘れ物を頼んでるんだ。
で、南さ、葵を向かえに行ってくれないかな?」
「はぁ?
何で?」
苦い顔をする南に、ちょいちょいと手招きした。
そして南の耳元で一言。
「葵のこと、好きなんだろ?」
「なっ…!」
バッと離れる南は、真っ赤な顔をしていた。
「だから、迎えに行ってやって。
ついでに告ってくればいいよ」
「は、はぁ!?
何言ってたんだよ!
俺は葵のことなんか…!」
「好きなんだろ?」
「うっ…!」
「隠さなくていいよ。
前から知ってた」
「なっ…、いつから…」
「秘密♪
けど、誰かに取られて後悔する前に告白しといた方がいいんじゃない?」
「……ちっ」
南は短い沈黙の後、小さい舌打ちをして、校舎に走って行った。
それでいいんだよ、南。
俺みたいに後悔はしてほしくないからね…。
南ならいい。
南なら、葵を任せられる。
俺はそう信じてるから…。
頼んだよ、南。
あっ、そういえば葵って暗いとこダメだって言ってたっけ?
……ま、なんとかなるよね。
俺は走って行く南に背中を向けて、委員会の仕事に向かった。



