…こうして時間は過ぎていき、忙しかった二日間はあっというまに終わって、気づいたらもう文化祭最終日の打ち上げの時だった。
「みんな、お疲れ〜!」
「いやー、まさかうちのクラスが一番人気だったとわな〜」
「やっぱ逆転男女がうけたんだろうな!」
「ま、何はともあれ、乾杯ー!」
『乾杯ー!』
教室で飲み物や、料理を食べたりして、みんなでワイワイ騒いだ。
私たちのクラスは、他のクラスと比べて断トツ一位だった。
だからか、担任の先生も喜んでいた。
――……。
「おっ、外が賑やかになってきたな。
キャンプファイアの用意ができたんだろ。
ほら、みんな外に出ろー」
「「はーい」」
お腹も満腹になった私たちは、先生の一声で外に出ることにした。
そとでは最後にキャンプファイアをして、その周りでダンスを踊るみたい。
しかも今年は生徒会の提案で、ダンスが終わったら花火も上げるらしい。
何とも豪華な文化祭だ…。
「…葵、いいの?」
こそっと隣を歩いていた葉月が耳打ちする。
内容は聞かなくてもわかってる。
私が告白するかしないか…。
別に絶対今日言わなきゃいけないってことはないんだけど…。
「葉月…」
あれから時間は少なかったけど、私なりに精一杯考えた。
そして出した答えは…
「私、今のままでいい」
「…え?」
「私ね、今が一番楽しいんだ。
葉月と琉衣と、南と。
笑い合えてる今が一番楽しいの。
だから、このままでいいや」
結局私は自分の思いを南に伝えないことにした。
「…ホントにそれでいいの?」
「うん…。
いっぱい考えたけど、安定してる今が心地いい。
それに…今は告白する勇気があんまりないから、また今度にする」
「…そっか」
「葉月、いろいろ相談に乗ってくれたのにごめんね?」
「何で謝んの?
葵が考えて出した答えなら、それでいいじゃん」
「ん…ありがとう」
「どーいたしまして。
…あっ、俺忘れもんした」
「何?」
「ハチマキ。
加奈枝先輩に渡すんだったのに…」
「加奈枝先輩に?」
加奈枝先輩とは、葉月が所属してる弓道部の部長で二個上の先輩。
「何でハチマキ?」
「加奈枝先輩が『最後の文化祭だし、記念に何か頂戴』って言ってきたんだよ」
それでハチマキですか…。
この学校では、ハチマキは毎年記念で貰えるようになってるみたいだから、誰かにあげたとしても別に問題はないんだけど…。
もうちょっといい物なかったのかな…。
「それでさ葵、頼みたいんだけど…代わりに取ってきてくれない?」
「え!?」
「俺今から委員会の仕事があるんだよ」
「そうなんだ…。
別にいいけど…」
「ホント!?
助かるよ。
じゃ、よろしく!」
そう言って葉月は外に出たとたん走り出して行った。
はぁ、しょうがないな。
また教室に戻るとしますか…。
みんなが外に向かう中、私は反対を向いて、また校舎の中へ入った。



