「…ここだ!」




南の一発目は、ウサギの右頭に当たった。




グラッと揺れるも倒れない。




「ま、そう簡単には落ちないよな」




そう言って南は二発目を打った。




今度は左の頭に当たった。



「これで最後だ」




三発目はちょうどうさぎの頭の真ん中に当たった。




大きくぐらついて…。




見事後ろに落ちた。





「すごい、南…」




たった三発で、取るのも難しそうなぬいぐるみをあっけなく取る。




店のおじさんも驚いていた。




「ほら」




「あ、ありがとう…」




これと言ってすごく欲しかったという訳でもなかった。




でも、せっかく私のために取ってくれたんだ。




すごく嬉しい。




「じゃぁ南にはキャラメルあげるね」




私が取ったキャラメルの箱を南の手のひらに置いた。



「…さ、サンキュ」




「うん」




笑顔でうなずく。




そんな時、葉月が




「そろそろ花火始まるぞ!」




と慌てていた。




気づいたら既に花火が始まる前の10分前だった。




「い、急ごう!」




私たちは急いで花火が見やすい川沿いに向かった。




「ま、待って…」




人混みの中を急いで潜るも、南と葉月は先に行って見えなくなってしまった。





「南、葉月…!」




名前を呼ぶも周りの人たちのざわめきに下記消される。




そしてドンッと誰かにぶつかって、足がよろけてこけてしまった。




「痛…」




南…葉月…。




一人は嫌だよ…!




「たくっ。
ホントお前からは目が離せないな」




「え…」




上から聞こえる声。




「ほら」




地面に座っていた私の手を取って立たせてくれたのは…。




「南…」




「いきなり消えてビビったぞ」




「ご、ごめん…」




南が来てくれて安心したのか、涙がこぼれた。




「泣くなよ。
そんなんじゃ花火なんか見えないぜ」




涙を流す私に、南は優しく袖で拭ってくれた。




「葉月も心配してる。
行くぞ」




「うん…」




手を握られて人混みの中を進んで行く。




南と繋ぐ手は力強かった。



葉月の元に向かう間に、花火は始まってしまった。




ドキドキする心臓。




花火が始まったからじゃない。




これは…南に対して。





……そっか、私……。
























南が好きなんだ。