【南】




…やべぇ…。




頼むからそんな暴れるなよ、俺の心臓…。




くそっ、葉月のやつ…。




―今から数分前―




「は〜、喉渇いた〜」




三人でビニールボールでバレーをした後、葵が砂浜にぐったり座って言った。




「じゃぁ休憩しよう。
…俺食べ物頼んでくるから、南と葵は近くにあった自動販売機で飲み物買って来なよ。
店のは高いから」




「そうだね。
じゃ、行こう南」




「あ、あぁ」




「葉月、お茶?」




「うん。
南も葵も焼きそばでいいよな」




「うん」




こうして俺たちは葉月と別れて上の方にある自動販売機に向かった。





―そして現在―




…葉月のやつどういうつもりだ?




俺と葵を二人にするなんて…。




まぁ何も考えずに言ったことなんだろうけど…。




無性に緊張する…!




いっつも葉月がおまけでついてたからな。




いざ二人きりになるとやべぇ…。




「ねぇ南、何にする?」




「はっ!?
あ、えっと…グレープ…」



「……?
わかった」




自分の飲み物代を葵に預けて任せた。




ヤバいヤバい、少し落ち着け俺!




テンパり過ぎだ!




「……南」




「ん?」




パタパタと顔の熱を冷やすために手で扇いでいると、下を向いたままジュースを持った葵が話かけてきた。



「……」




「…何だ?」




「……やっぱり何でもない」




へへへと笑って帰って行こうとする。




何だったんだ?




葵が何を言いたかったのかよくわからなかったけど、また今度話してくれるだろうとそこまで気にしなかった。




気づいたら葵はすでに階段を降りようとしているところだった。




「葵ー、砂で滑るなよー」



そう注意した時




「うわっ!」




ツルッと階段で滑りかけていた。