【葉月】
お化け屋敷から出た後、お土産物を見たり、遊んだりしていると、残り時間が30分ぐらいになっていた。
「どうする?
後乗ってないの観覧車ぐらいだけど…」
「なぁ、もう1回ジェットコースター乗ろうぜ!」
「えぇ〜!?」
満面の笑みで言う南に、葵は嫌そうな顔をした。
「また乗るの〜?
観覧車乗ろうよ〜」
「観覧車なんてゆっくり乗ってるだけじゃん。
つまんねぇーよ」
「つまんなくないよ!
高い所からキレイな風景見れるしさ」
「ジェットコースターの方がぜってぇ楽しいし」
「観覧車!」
二人ともまたケンカしてるし…。
しょうがないな。
「ほら、ケンカしない。
南、ジェットコースター最初乗ったしさ、ここは葵の観覧車にしないか?」
「やっぱ葉月はわかってるね!
という訳で、2対1で観覧車ね!」
「えぇー…。
俺、観覧車興味ねぇよ…」
嬉しそうにする葵とは反対にダルそうにうなだれる南。
葵は「わーい!」と言いながら観覧車に向かって行った。
その後ろ姿を見ながらクスクスと笑う。
けど、隣にいる南は不機嫌になっていた。
観覧車について列に並ぶ。
南はまだ機嫌が悪く、葵と微妙な雰囲気になっていた。
…はぁ、まったく手のかかる子供みたいだな…。
そして俺たちの順番が回ってきた。
俺は
「ちゃんと二人で話して、仲直りしてこい」
二人の背中を押してそう言った。
「「わっ!」」
二人は声を上げて驚く。
そんな二人に手を振る。
ホント、いつまでたっても子供だな…。
小さく笑ながら、俺は近くにあるベンチに座った。



