それから教室に帰ろうと歩き出した時に気づいた。
「あれ、南。
ケンカしたわりには服とか汚れてないね…。
もしかしてケンカしてない?」
「ギクッ!」
南の顔を下から覗くと冷や汗を流していた。
「図星?」
「ち、違…!
…うくもねぇか…。
そうだよ、ケンカなんかしてねぇよ」
「え、でもケンカしに行くって言ってなかったか?」
「それは…葵から離れるための嘘だよ」
「嘘…?」
「…気まずかったんだよ。
葵と一緒にいるの…」
「何それ!
私だって気まずかったよ!
…まぁ、ケガがなくてなにより…だけど」
「葵…」
「でも、ケンカしてないなら心配して損したかな〜」
「えっ!?」
人を心配させたお仕置きに、ちょっとイタズラっぽく言ってみた。
すると予想外の南の反応。
何か慌てふためいてる感じ。
…ちょっとかわいい…。
さっきまで私たちのやり取りを笑顔で聞いて、見ていた葉月は何かに気づくと慌てて
「やばっ!
二人とも、そんな悠長なことしてる場合じゃ…」
何かをいいかけた時、ちょうど昼休みの終わりのチャイムが鳴った。
「チャイム…あっ!」
私も今気づいた。
「ご飯食べてない…」
「あっ…」
呟いた言葉に南も気づいて、口をポカーンと開けている。
「…南のせいだ〜!」
「はっ!?
何で俺のせいになんだよ!
大体俺を探すまえに二人で飯食いにいけば良かっただろ!」
「行けないよ!
南のいない昼ご飯なんて、嫌だよ…」
「葵…それってどういう…」
「はいはい、ケンカはそこまで」
私と南の言い争いの間に葉月が仲裁しに入った。
「こればっかりは誰のせいでもないし、しかないことだろ?
放課後俺が何か作ってやるから、仲良くしろよ。な?」
「葉月がそういうんなら…」
ニコッと笑う葉月に私も小さく微笑む。
「葉月の料理はおいしから好き!」
「ホント?
ありがとう」
笑顔の葉月に頭をなでなでされた。
さっきまで南の隣で言い合っていたが、今度は葉月の隣に来て話す。
南はというと…。
少し先を歩く私と葉月に
「ちょっ、待てよ!」
と追いかけて、また隣に来た。
「葉月は俺たちの保護者みたいなもんだからなー」
「ははは、そうだね!」
「俺はお前らの保護者じゃなくて、幼なじみなんだが…」
笑い合う私たちは、優しい春の風に吹かれながら、新しく始まるこれからの日々に、わくわくしていた。



