部活の練習で、俺と仙崎はベンチに座っていた。


最近、先崎と少し仲良くなってしまった気がする。

あいつは不思議だ。

変態で無表情の棒読みなのに、俺がちょっと心を開くと入り込んでくる。


「東藤さん、好きです」


「……隙をついてそういうこと言うのやめてくれないか」

「頬が赤いですよ」

「うるさい」


このままではダメだ。

こいつに騙されてしまう。




「お兄ちゃん」

「な、奈々緒」

「練習、見に来たよ」

「体は大丈夫なのか」

「うん」


とはいっても心配だな。


「仙崎、奈々緒のことを頼む。具合が悪そうだったら呼んでくれ」

「かしこまりました」




俺はそのまま練習のため、その場を離れた。















「仙崎さんも物好きだね」

「何がでしょう」

「たしかにお兄ちゃんは顔はかっこいいけど、性格は融通の利かない頭でっかちなんだよ」

「存じ上げております。東藤さんのお家は元々有名な財閥の一つで、東藤さんは厳しく育てられてきたそうですね」

「あ、知ってたんだ。お兄ちゃんから聞いたの?」

「………………自分で調べました」

(どうやって調べたんだろう……)







ん?

何か二人で話してる。

ここからじゃ聞き取りにくいな。









「僕はじい様達に育てられたからね。お兄ちゃんみたく厳しくされてないんだ」

「存じ上げております」




「……やっぱり、僕みたいな奴より、お兄ちゃんみたいな人が頼りになるよね」








まだ聞き取りにくい。

もう少し近づくか。










「そうでしょうか。東藤さんはよく貴方の事を口にしておられますよ」

「え?なんて?」

「"あいつはよく気がついて世話焼きで、つい頼ってしまう"と……」













「言うなぁあああぁあああぁぁぁぁあぁあ!!」











「おや、東藤さん。練習じゃなかったんですか」

「お前が恥ずかしい事暴露しなかったら今ごろできてたわ!デリカシーをもてデリカシーを!」


「暴露しなくても話の内容気になって練習してなかったろ、悠吾。あと、今さらそいつにデリカシー求めるな」


「部長、彼女さんとは上手くいってますか。最近ケンカしたみたいですが」

「余計なお世話だ。つか、お前はいつもどこで俺の情報を手に入れるんだ」




進が入ってきてくれたおかげで、なんとか落ち着いた。





「奈々緒、仙崎が言った事は気にするなよ」

「なんで?僕嬉しかったよ?」

「弟さんもそういってますから、許してやってください」

「お前のせいだってこと忘れるなよ」


クソ、恥ずかしくて言えなかった事を、あんなさらりと言いやがって……。


……落ち着け、俺。

お茶でも飲むか。



「……あ、東藤さん」

「ん?」

「それ、私が作ってきたお茶です」


「…………」


目の前が、回る。




――バタッ


「お兄ちゃん!」

「悠吾!仙崎、お茶に何を入れた!?」


「睡眠薬」


「保健室に運べ!」