『距離を置く、って。なんで置かなければならないんだ?』

だって、昴は俺のことが好きで……。

『それは幼い時に俺がおかしな約束をしてしまったせいかもしれない。偽物の想いかもしれない』

だから、けじめを付けるために距離を……。

『必要ないだろ』
















『俺が昴の前から消えればいい』












――ゴッ!


アクション映画にでも出てきそうな音が響き、俺は地面に吹き飛ばされた。医療器具に当たらなかったのが幸いだった。

あの鈍い音は、蓮華が俺を思い切り殴ったものだ。


「っ……」

痛い、どころじゃない。殴られたところが熱い。多分奥歯の一本は折れたな。






「東藤さ……、なっ」

「お前はこっち」

蓮華は、俺に駆け寄ろうとした昴を抱き寄せる。

「やめろ」と言いたいのに、殴られたせいか頭がクラクラする。



「離しなさい、蓮華」


「お、ラッキー。呼び捨てされちゃった」

「ふざけてないで、やめてください」


昴がどれだけ抵抗しても蓮華からは逃れられなかった。男と女の力の差と言うものだろう。

なんとか立ち上がれた俺は、絞り出すように声を出した。


「やめろ、蓮華……」


やばい、目の前がかすむ。こいつ意外に喧嘩強いな。


そんなこと思っていたら、外の方が騒がしくなってきた。

そして、教師の怒鳴り声より怖い声が頭に響いた。










「馬鹿共ゴルァ、なぁーにしてんだァ」



進だ。