「悪いな、笑って。あの東藤クンがヤキモチなんて妬いてんのが面白くてな」

悪いな、なんて言いながらも。未だに不愉快な笑いをやめようとしない蓮華。


「ヤキモチ、だと?」

「まあ東藤クンも言ってるワケだし、昴と仲良く登校でもしようかな?」


そう言うと、蓮華は昴の手を握った。昴自身はそれに驚いてるみたいだ。


「なんのつもりですか。手を離してください」

「やだ、仲良しだもん」


昴は抵抗しているようだが、蓮華は離す様子を見せない。



「……やめてやれ、蓮華。いやがってるだろ」

「東藤クンには関係ないじゃん」

「五秒以内に手を離すか、死ぬか、全裸になるか。選べ」

「なんで全裸が選択肢に入ってんの!キレすぎだろ!どんだけヤキモチ妬いてんだよ!」

「キレてない!妬いてない!」


わけのわからない怒りが込み上げ、頭をグシャグシャにかきむしる。

これ以上ここにいたらおかしくなりそうだ。早く学校にいこう。

そう思い、二人に背を向けて全力で走った。


「東藤さん……!」

昴の切なそうな声が聞こえたが、振り払うように走るスピードを速める。












学校に着いてから、生徒会室に入った。

「はぁ……はぁ…」

サッカー部の副部長がなんてザマだ。無我夢中で走り続けて、もう足がガクガクだ。放課後の部活まで走れないかもしれない。

隣では副会長である進が呆れた顔をしている。


「大丈夫か、副部長」

「今は、生徒会長だ…」

「はいはい会長サマ。んで、どうしたんだ」

「……聞くな、恥ずかしい」


は?と、意味がわからないと言いたそうな進が視界の端に見えた。

何だかもう俺すら意味がわからない。なんなんだ、このモヤモヤは。

俺が昴を好きだというのか?ふざけるな、有り得ない。


試しに、進にも聞いてみる。



「進、お前は昴のこと好きになれるか?」

「最低な質問だな。いくら仙崎でも傷つくぞ。まあなれないがな」


ほら、やっぱり。

たしかにひどいかもしれないが、昴を好きにはなれない。理由はある。あの変態体質だ。

「昴はもっとあの変態行動を抑えるべきだ。誰かに好きになってほしいなら自重も必要なんだ。まったく、将来が心配だな。今度改めて注意してやらんと……ん?」


なんだ?進が爆笑してる。今日はよく人に笑われる日だな。