「ブハァ」

今のは昴が無表情で吹き出した声だ。

蓮華の「ライバル」という発言がツボに入ったらしい。笑いをこらえて震えている。


「ラ……イバッルって…。ちょ、病院行ってきたらどうですか。かなり痛々しいですよ……ブハッ」


過去の話をしたとき以来、少しテンションが低かった昴だが、どうやら元気が出たようだ。


「無表情で笑うなあああああ!すげえムカつくうううう!」

「いちいちうるさいですね。笑えないんで死んでください」

「別にお前を笑わせるために言ってんじゃねえんだよ!お前マジで腹立つな!」

「チッ、東藤さん。こんなやつほっといて先に行きましょう。加藤部長が怒りますよ」


蓮華が昴に向かって何か叫んで(訴えて)いるが、たしかに進が怒るのは恐ろしいので学校へ向かうことにした。

ちゃんと蓮華も連れていくがな。


それにしても、ライバルとはなんなんだ?
昔に何か悪いことでもしたのか?


俺は歩きながら、蓮華に尋ねた。

「蓮華、ライバルとは一体……」

言いかけて、蓮華にキッと睨まれた。

嫌われているみたいだ。


「東藤クンさ、本当は覚えてるんじゃねえの?わざと忘れたフリしてるとか」

「申し訳ないが、本当に忘れたんだ」

「…………」


あ、しまった。傷つかせてしまったみたいだ。
蓮華は涙目になって俺を睨み付けている。




どうやら俺は記憶力が悪いようだ。昴のときも覚えていなかったし。


「なんか、ごめんな」

「謝るなああああ!」


あ、走っていった。

ショックが大きかったようだ。


昴は追いかける気はないようで、ボチボチと歩いてる。

俺が「行くぞ」と、蓮華を追いかけようとしたら。


「追いかけるんですか?」

と言われた。顔には出てないが、声からして嫌みたいだ。

だが、久々に日本に来て迷子になったばかりだから心配だ。
また迷われては困るので、追いかけることにした。

俺が行くというので、昴は仕方なくついてきた。