「うん、話して。」


 小さく答える。


「一緒に暮らそう。」


「えっ…」


「もう、帰る家無いんだから…。婚約者なんだし、家で暮らせばいいよ。」


 現実問題だった。退院しても帰る家がない。あってもあの家には…帰れない。


「…ごめんなさい。まだ……」


 現実を受け止めるのに必死で考えが回らない。


「僕が居るよ、大丈夫。」


 頭を撫でて額に優しいキスを送られる。溢れ出す涙を優しく何度も拭われて照れ笑いを微(かす)かに向ける。