小さい頃に、母から聞いた話がある。
どんなに酷い惨たらしい悪夢でも、綺麗な光を放ち、朝靄と共に消えていくと。

ハロウィン生まれの子限定の魔法だとも言っていた。

「だけど、僕達は生きられないんでしょう?」

週に一度の、数分だけ許された面会。
座っている母の膝に縋りながら、ロイが尋ねる。
彼女の膝に座ったイヴも、不安そうな顔で母を仰ぎ見る。

「大丈夫よ。貴方達は生きられる。
本来の名前を名乗ることを許された時、今までにない素敵な朝を迎えられるわ」

そう言って、彼女は紫色のリボンを揺らして笑った。