「翔一、落ち着いて」
「――っ……」


翔一は拳を握りしめ、唇を噛みしめた。



「あの車、てめーらのだろ?鍵よこしな。」



俺たちの後方にある車を指して、後藤は叫ぶ。


真司が視線を合わせ、小さく頷いた。


俺はポケットに入れていた車の鍵を後藤に投げ渡す。



「ほらよ。」
「いいか、てめーら…絶対動くんじゃねーよ!」



ナイフを絢音に突きつけたまま、後藤はゆっくり車に近づいていく。


「アイツ逃走する気か」
「ねぇ、隆くん。」
「?」



真司が後藤に聞こえないように声を抑え、俺に投げかける。