不安と怒りが入り交じった感情が僕を支配する。


四条ビル……四条ビル……。


呪文のように頭で繰り返し単語を復唱する。



玄関へ歩き出した僕の腕を翔一が掴んだ。




「待てよ。今の静からだろ?俺も行く。」
「ダメだ。」
「何でだよ!?」
「翔一が来ると邪魔なんだ。足手まとい。」
「なっ…………」



翔一は唇を噛みしめた。



「俺は…絶対行くからな。」
「ダメだ。」
「何でだよ!?別に守ってくれなんて頼んでねーだろ!!足手まといなんかになんねーよ!」
「ダメだって言ってるんだ!!」


思わず叫んでしまった僕を見て、翔一は瞠目した。



「なんで、だよ?」
「………たまらないんだ」



翔一の肩を強く掴む。


「また……大切な人を失うのかと思うと、たまらない。」
「……………」
「あんな喪失感、もう……味わいたくない。」
「………真司」
「僕のせいで誰かを失うのは、もう………嫌なんだ。」


肩に加わる力に翔一が顔を歪めたけど、俯いていた僕には見えなかった。



「だから、ここにいて。頼むから」
「…………やーだね。」



僕の手を振り払って翔一は笑った。



「話聞いてたか?俺はお前に守られたい訳じゃねぇんだよ。」
「………それでも」
「俺は、自分の居場所を守りたいだけだ。だから絶対行く。あんな奴に居場所奪われてたまるか!」



星は太陽の光を受けて輝く。


僕は太陽に惹かれた星の一つ。


あの日から僕は翔一に惹かれていたのかもしれないな。



「分かった。でも約束してね。翔一は僕のことを殺すまで、絶対に死んじゃダメだよ。」
「おう。そう簡単にくたばってたまるかよ!!」




月光を求め歩くのはもうやめよう。


太陽の隣で歩いていこう。