ビルから出ると夕方だというのにじめじめと熱く、汗が肌を伝うのが分かる。
暦の上ではとっくに夏は終わってるというのに。
そういえば…
アイドルに連絡しなきゃ、と思い鞄から携帯と手帳を取り出した。
携帯を開き、手帳も開く。
何度も何度も携帯の番号が間違っていないか見比べ、これで大丈夫とピッと発信ボタンを押す。
――4回目の呼び出し音が聞こえた後。
『もしもし』
「もしもし。私、だけど…」
『うん。夏芽ちゃんだよね』
ふんわりと優しい声が聞こえてきて思わずクラッとしてしまいそう。
『かけてくれたって事は仕事終わったんだね。お疲れ様』
「ありが…、私はどこに行けばいいの?」
『どうしようか。夏芽ちゃんはまだ会社の中?』