孤高の魚




………


不穏な空気が一瞬、店内に漂った。

ママは静かに息をつきながら、彼女に向き直り、淡々とした口調で尋ねる。


「……そうね、まず、自己紹介からしてちょうだい。……あなた、お名前は何ておっしゃるのかしら?」


そんなママの質問に、僕はドキリとしない訳にはいかなかった。

慌てて僕も彼女へと視線を向ける。

彼女は一息呼吸を置き、


………



「……ナナミです。野中、七海」


と、
そう丁寧にハッキリと答えた。