孤高の魚




しばらくはみんな黙ってコーヒーを飲み、シュークリームを頬張った。
有線のピアノジャズがまた、やけに耳に障る。


………


「……あの」


最初に沈黙を破ったのは彼女だった。
シュークリームのクリームを、小さな唇の端にくっつけながら、あどけない表情でママに向かい合う。


「……私、ここで働かせてもらえないでしょうか?」


彼女の突然の言葉に、僕達はみんな驚いた。
そんな僕達の様子にもお構いなしに、彼女はいたって凛としている。
クリームがついたままの唇をギュッと結び、真っ直ぐにママを見詰めている。


「お願いします」