緩いピアノジャズは、二人の間を申し訳程度に流れていた。
僕は時折彼女にチラリと視線を投げて、すぐにそれを手元のグラスに戻した。
彼女の、カウンターの上で小さく組まれた指が、頼りなく細く、ハッとするほどに白い。
実際、彼女はひどく幼くも見える。
華奢だからだろうか。
真っ直ぐに伸びる首筋などは青白く、ヒョロリ、としている。
確かに…そんな所は歩太に似ていなくもない。
………
「やっと……やっとアユに会えると思ったのに」
そう呟く彼女の言葉は、虚しくカウンターの上に溢れる。
僕はそれをあえて拾わずに、相変わらずただ黙ってグラスを拭いていた。

