「歩夢さんは? アユとはどんな関係なんですか?」
彼女の、ハッキリとした強い口調。
声がよく通る。
「……どんなって……どんなって事も……」
それに押されて、僕はどこかしどろもどろだ。
「アユの居場所、知らないんですか?」
「……君には悪いけど、知らないんだ。
僕は実は、歩太の事はよく知らない。
……妹さんがいる事も、知らなかったしね」
………
カチャリ
カチャリ
………
僕がグラスを並べる軽い音が、やたらに響く。
その合間に、彼女の溜め息が聞こえていた。
「なら、わたしは……これから……どうしたらいいのかな」
誰に問うでもなく、今度の彼女の声はか細い。
僕はそれを黙って聞いた。