「うあああっ――……」
ほとんど無意識に、腹の奥から低い声が漏れ出る。
歩太の文字を目で追う内に、とてつもなく大きな感情の波が、僕の頭上から覆い被さって来る様な感覚がした。
それは怒りの様でもあり、悲しみの様でもあった。
膝が崩れ落ちる。
フィルターを握りしめて、ベッドを背もたれに絨毯に座り込んだ。
頭の中が熱い。
耳の奥が痛む。
気が付くと僕の両目からは、大量の涙が溢れ出していた。
声を上げて泣く。
あの夜、裸でベッドカバーにくるまれた野中七海が、僕の腕の中でそうしたように。
喉が悲鳴をあげる。
鼻水が垂れ、口の中に入り込む。
僕の中の液体という液体が全部一緒になって、全て流れ出てしまえばいいと思った。
この部屋に染み出して、僕という実体が消え失せてしまったとしまっても。
構うものか。
「歩太」
歩太の名前を呼ぶ。
「すまない」
掠れた声を絞り出す。
すまない、歩太。
僕は彼女を守り切れなかった。
『力になる』
君もそう言ってくれたのに。
結局僕は、彼女を手放してしまったのだ。

