歩道橋の階段を上り、長い歩道をひたすら歩いてから、駅を抜けて東口を出る。
大きなビルが立ち並んでいても、正面とは違いこざっぱりした景色が広がっている。
予備校や専門学校などが多いようだ。

何となく無機質な空気に、身体はやけに寒さを感じ取る。


………


「……変わったわね」


その光景に、野中七海が小さく口を開いた。


「街だって、生きてるからね。僕達と同じように……少しずつ変化するんだよ」


……『僕達』
僕は意識的にそんな言葉を選んだ。

彼女は、それを聞いているのかいないのか、よくわからない表情のままだった。


………


カツンカツン、カツン


彼女のパンプスが乾いた音を立てる。
この辺りは人通りも疎らで、まるで生活感がない。

道路も広く綺麗だが、比較的車も少なかった。