「5年前のクリスマスに、アユがくれたのよ」 テーブルを拭きながら、野中七海は淡々とした口調で言った。 クリスマスに? それで今日は、特別に身に付けていた訳だ。 「わたしには、この透明なお魚のついたネックレス。 一咲には、ピンクのお花のついたネックレス。 ……わたしは、群れをはぐれてキラキラと泳ぐ魚。 一咲は、たった一輪、美しく咲き誇る花。 ……確か、そんな事を言ってたわ、アユ」 ……… シュ、シュ、シュ ほとんど片付いたテーブルの上を、彼女は手際よく布巾を走らせる。