尚子が何か、夜に対してトラウマを抱えているのかもしれない……なんて事は、僕だって薄々感じたりもする。
けれどもそこは、僕の立ち入る所ではないし、尚子がそれについて語らないという事は、僕に理解を求めてはいないという事なのだろう。
………
「……ねーーえ、歩夢」
韓国映画を三本通して観て、固まった身体をベッドの上でほぐし合い、お風呂に入ってサッパリとした尚子が、僕の顔を見て呟いた。
尚子の顔は化粧を落として素顔になっており、僕はこっちの尚子の顔の方が、素朴で可愛らしく、ずっとずっと好きだ。
………
「……歩夢は、まだ……あたしの前から、いなくならないでよね」
濡れた髪にタオルを当てながら、恥ずかしそうに俯きながら尚子が呟く。
………
少しビールで酔っているのだろうか。
なんだか尚子らしくない、トーンの低いかすれた声だ。

