「でも結局ね、パパに嘘をついた事は、わたしにも都合がよかったの。
わたしは家を出て、教えてもらっていた連絡先に連絡をして、一咲とアユのアパートへ、転がり込んだ。
アユは、その頃からバーテンを始めていて、国分町で働いていたの。昔から、すごく人気があったのよ。
……二人は、わたしが仙台へ来た事をすごく歓迎してくれたわ。
わたしも、パパに内緒で、二人を思う存分スパイするつもりだった。
だって、一咲に赤ちゃんが産まれる前に一咲が見つかってしまったら、結局また同じ事の繰り返しだもの」
彼女は短くなった煙草を灰皿に押し付ける。
苦い香りが鼻を突く。
………
「一咲は、罪の子を産んでパパを失望させるの。
わたし、何よりもそれを望んでいたのよ」
……カチン
そうしてまた、新しい煙草をくわえ火をつけた。
「そうしてそれを、自分の目で、見届けるつもりだった」

