孤高の魚




「どうゆうこと?
前からって?」


僕の問いに答える様に、真っ直ぐに僕を見上げてから、尚子は呼吸を整える。

尚子の目は、驚きからか不安からか、まだ少し潤んでいた。


「うん……時々ね、ナナミちゃん、震えが止まらなくなる時があるみたいだった。
話してる時にさ、何かのキッカケで……唇がガタガタ震える事があって……
そんでタバコをね……タバコを吸うと少し落ち着くからって」


煙草を……?


「そんで、しばらくタバコ吸ってるとね……落ち着いてたみたいなのよ、いつも。
だけどあんなにひどいのは初めて……」


………


僕は……

野中七海が「煙草を」と言って部屋を飛び出した時の事や、灰皿の中で灰になっていく煙草を、彼女がすぐに忘れてしまう癖がある事を思い出していた。