歩太が気に入っていたらしいオーガニックレストランは、思ったよりアパートから程近い場所にあった。
店内はこざっぱりとしていて飾り気がなく、音楽も派手ではない。
有機野菜が中心のお店で、ワインの種類が豊富にある。
工藤さんは食前酒に白ワインを頼み、僕はグラスビールを注文した。
………
「歩夢、お前、ナナミちゃんと何かあったんだろ?」
つまみに出た牛蒡チップスをかじりながら、僕の向かいでそう言ってニヤリとする工藤さんに、さっきの僕の失態に対する遠慮は一切ない。
「まあ……」
そんなあっけらかんとした工藤さんを目の前にしても、僕は相変わらず言葉がうまく出て来なかった。
「ったく、情けねえなあ。……まあ、わからないでもないけどな」
工藤さんは運ばれてきた白ワインに口をつけると、眼鏡の奥で頷くように瞬きをした。
僕もビールに口をつける。
けれども、やはりまだ麻痺しているのか、よく味がわからない。

