………
……僕は。
僕はと言えば。
相変わらず二人との微妙な距離を保ちながら、それなのにどこか悶々として、鬱積した日々を過ごしていた。
それが、尚子の妊娠のためなのか、近付けない野中七海との距離のためなのか、僕自身にも分からない。
恐らくは、それら全ての事。
僕の周りで起こっているほとんど全部の事が、僕をひどく憂鬱にさせているのだろうと思った。
………
僕の存在は……
僕が意識している以上に、勝手に一人歩きし始めている。
何だか妙に、そんな風に思えて仕方がなかった。
野中七海は、常に歩太の面影を僕へと投影し、僕はいつも、それに従順である事を求められている。
僕は無言のまま、それを受け入れ、従っているのだ。
それが何故なのか、僕にもわからない。
それも恐らくは、彼女の不思議な魅力のためなのかもしれなかった。

