孤高の魚




僕の知っている野中七海という女の子は、基本的にいつも明るく振る舞っていた。

彼女は、明るさを礼儀としている節がある。


にっこりと笑い、ウフフ、と声にする。
それだけで彼女の周りは、一気に華やかになる。

そんな風だから、「さくら」でも彼女は人気者だった。
彼女を口説きに来ている客は、少なくない。

けれども、彼女が同伴以外のプライベートで一緒に食事をする男は、僕と工藤さんの二人だけだった。

後はみんな、ことごとく、やんわりと断られている。


『ごめんなさいね』

と彼女が笑って言えば、大抵の事は許された。

野中七海は、内側にいつも、何か不思議な力を秘めている。
人を惹き付け、人を巻き込み、けれども自分は決して揺るがない。