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……


暫くの間沈黙があった。
コーヒーを啜る音もない。

僕のカップはとっくに空になってしまっていたし、おそらくは他の二人のカップも、すでに空になっているのかもしれなかった。

僕のソワソワした視線に気が付いたのか、野中七海が立ち上がってコーヒーを入れる準備を始めた。

コーヒー豆の芳ばしい香りが、僕の鼻孔を擽る。


………


「……じゃあ」


そんな沈黙を破ったのは、尚子の鼻にかかる気だるい声だった。


「じゃあさ。ナナミちゃんはさあ。歩太が戻って来るって信じて、ここでずっと待ってんの?」


露骨な質問だと思った。
僕には、とてもじゃないけれど、彼女にそんな質問はできない。