………


……


ピン、ポーーン


野中七海が洗い物を片付けている間、僕がコーヒーのおかわりを啜っているうちに、いつもよりも心なしか弱々しくドアのインターホンが鳴った。


「あ、ああ、わたし」


野中七海が僕を振り返り、パタパタと慌てたけれど、

「ここにいて。大丈夫だから」

と、それを制して僕は玄関へと急いだ。


………


「……歩夢……」


僕が玄関のドアを開けると。
そこには、ジーンズ姿のいつもより弱々しく僕の名前を呼ぶ尚子が立っていた。

化粧はしているけれど、尚子の顔には、隠しきれない何か暗さのようなものが漂っている。
僕を見上げる大きな瞳は、今にも泣き出してしまいそうだ。

やっぱり変だ、と僕は焦る。