Lonely Lonely Lonely

「立ち話もなんだから、近いうち食事でもしよう」



そう言って、瑠璃子は名刺をくれた。


美容室の名は、leaf。
「葉っぱって色が変わるじゃない?
女は美しく変われる、という希望を込めて。私の中ではどちらかというと、グリーンよりも、秋の紅葉のイメージで、モチーフはレッドなの。

女心と秋の空という言葉も好きだしね」


らしいな~。
思わず、笑みが漏れた。



「自由だね。瑠璃子は」



まったく、あなたらしいよ!



「だって、私の店だもん」



「すごいよね。いつ開業したの?」



「約半年前」



「頑張ったんだね。私も何か手に職をつければ良かったなあ」



「なんで、過去形なの」



「へ?」



「今からでもいいじゃん」



………たしかに!!
私と瑠璃子の違いは、こういうところだよな、と思う。



「ごめんね。仕事中に長話しちゃって。連絡ちょうだいね」



瑠璃子は、ネクタイを数本購入して、帰って行った。



「マネージャー、沢田様とお知り合いだったんですね」



このフロアーでは一番の若手、奥村が小走りでかけよってきた。



目がハートだ。瑠璃子のファンか?



「うん。高校の同級生だよ。よく来るみたいだね」



「ええ、最近のお客様ですが。ウチのデザインやディスプレイが好きだとおっしゃってくれて」



「へえ……」



瑠璃子がそう言うんなら、この店の評価あげとくか?


私は、各店舗をまわって、社員の接客態度や、店内のディスプレイや品揃え、掃除が行き届いているかどうかをチェックする。
そして本社に報告をする、という仕事をしていた。



たいして仕事出来ないのに、たまたま、お客様アンケートによる「接客大賞」で優勝してしまったからだ。