「あんたいつもそう言ってるのに、結果、泣いてばっかじゃない」



呆れたようにそう言うと瑠璃子は、
ジンライム、と隣に座っている涼をつついた。



「大丈夫、今度は絶対大丈夫なんだから!!」



力が入った私に、



「みるくには、クールダウンのトニックウォーターかな」



と、言いながら涼が立ちあがったので、



「だめ!私はジントニックにして!!」



投げつけるようにそう言った。



「グミちゃんは?」


まるで何事も起こっていないかのように、



涼はその名の通りの涼しい顔で、グミに優しく問いかけた。



「私は……まだ……」



グミのジョッキにはまだ半分以上ビールが残ってた。



そんなグミをいい子いい子しながら、



「さて、戦場に戻るか」



涼はそう言って、カウンターへ戻って行った。



その後注文した飲み物は若手バーテンの順平くんが運んで来てくれた。



「こちらはマスターからのサービスです」



大盛りのフライドポテトと共に。



涼はカウンターの客達にとり囲まれ、
しばらくこちらには戻れそうにない様子になっていた。いつものパターンだ。



ここへ来るのは平日に限る。私はいつもそう思う。



平日だと、カウンターで涼とゆっくり話ができる。



しかし、今日のように週末に来ると、私達は、奥のテーブル席へと追いやられる。


そしてそこは、涼の束の間の休息場所になるのだ。私達とおしゃべりをしながら。少しだけ飲んで。
だから少ししか、しゃべれない。



「あ〜っ今日は金曜日か。それでもいい。今日飲みたい気分なの」



と言う瑠璃子の呼び出しで、私とグミは、出て来た。


男と別れた、か。まぁどうせそんなことだろうと思ってはいたが。