また?
あの子今、またって言った。有り得ない有り得ない。
だってもう裕太が来る時間……。
あれっ。まだ来てない。
来ない。来ない。来ない。
約束の時間はとっくに過ぎていた。
あいつ〜寝てるんじゃないだろうな、とバッグの中から携帯を取り出した時、
「ありがとうございました〜」
「えっ」
まさかの再会。有り得ない再会。
さっきの彼だ。
「友達と連絡とれて……まだ近くにいるから戻ってきてくれるって……。これ、余ったので、お返しします」
チャラリン。私のてのひらに、110円。まさかの返金!
「よかったですね」
と声をかけると、
「ええ、ほんとに。助かりました」
満面の笑みって、まさしくこれだよね。
プップー、とクラクションを鳴らされ、見てみると、裕太が到着していた。
「あ、私だわ」
「彼氏ですか?」
「いいえ。弟なの。それじゃ」
歩きだしたところで、
「待って下さい!」
待ってました!とばかりに、私は立ち止まった。
「なにか?」
しらじらしくそう言って振り向くと
彼は両手を合わせてお願いポーズをとっていた。
「名前と連絡先、教えて下さい!」
「え……」
「ぜひお礼、したいんです。今日は一文無しだから、改めて……お願いします!!」
大丈夫かな。教えても。
大丈夫だよね。きっと。
「名前は中山美久……電話は090********」
彼は内ポケットからペンを出して、
てのひらに、メモをしていた。
「ありがとうございます!ほんとに、助かりました。後で電話します、美久さん。僕は、高柳優樹です」
