「あいつ、見た目だけじゃなくて中身まで、変わってやがったな。あんな奴じゃなかったのに……」
川沿いの土手に座り、夕陽を眺めながら、
涼は言った。
「可愛かったね」
「はぁ?」
涙と鼻水でグシュグシュの私の声が聞きとれなかったのか、
はたまた、拓也のこと?と誤解したのか、
涼は、素っ頓狂な声をあげて聞き返してきた。
「水川晶。小顔、色白、ショートヘアで目がクリクリしてて、体育会系かと思いきや才女だなんて、言うことなしだよね。私、吐きそうだった」
「加えて、スポーツ万能だったら、どうする??」
「吐く。オエッ!!!」
ハハハッ。涼は明るく笑って、
「だいぶ顔色が良くなったな。ひと安心だ。さっきまっ青になってた時は、どうしようかと思ったけど」
ごめん……。
なぜか、声にならなかった。
「さて、帰るか〜これからバイトなんだ」
両手をあげてウーンと伸びをしながら、涼は立ち上がった。
「バイト?どこで?」
「某ファーストフード店」
「教えてくれないんだぁ。あれっ。部活は?サッカー、やめちゃったの?」
「やめたやめた。さっきのお前じゃないけど、吐きそうなほど、しんどくて、練習がさ」
「根性ないなぁ」
信じられなかった。
ずっと、MFで活躍してた涼が、サッカーをやめるだなんて。
「根性ないなぁ」
なんて言ってしまったけど……。
その時の私は、何もわかってあげられなかった。
余裕がなかった……。
「あっ。今日の代金、私払ってないっ!!」
バッグの中から財布を取り出し、涼の背中をツンツンとつついた。
「いくらだった?私の分」
「いいよ」
「ダメだよ」
