大地主と大魔女の娘



視界がショールで遮られ、身体が浮き上がる。

 つま先が不安定にぶらんと揺れた。

 何がどうなったのか―――。

 そんな疑問は囁きこまれた言葉で解決した。


「髪を、切ったのか」

「……。」

 無言のまま、頷く。

 何事かとそっとショールを払いのけて、彼を見た。

 同じ目線よりも、少し見下ろす高さで視線が絡み合う。

 間違いなく地主様に、抱きかかえ上げられているのだ。

 他の誰でもない事に驚いてしまう。


 何故、彼はこんな事をするのか解らない。

 煩わしいなら関わらねばいいだろうに。

 それで済む話だと思う。


 ふいに彼のものと思われる感情に晒され、思わず眉をしかめた。

 痛い。

 彼の今一番感じているであるのは痛みだった。

 よくよく見ればそれも当然だと気が付く。

 彼の唇は切れて血が滲み、眉尻の方もかすり傷が見える。


『痛い?』


 思わず、自分の慣れ親しんだ言葉で問い掛けていた。


『それほどでもない』



 すかさず返された言葉も馴染みの良い古語で、私はどこか安心してしまう。