しまったと思ったが、何もかもが遅かった。
「帰るぞ!」
「嫌、嫌、嫌―――っ!!」
娘は大声で泣き出し、今までに無いほどの拒絶ぶりを見せている。
俺の伸ばした腕を振りほどこうとしてバランスを失い、その場で座り込んだまま泣きじゃくる。
やはり、姉も同行すれば良かったかも知れない、等と考えている場合ではない。
娘の傍らに膝を付いた。
「何だ、何だ? 人さらいか?」
「いや、痴話げんからしい」
「かわいそうに。女の子、怯えちゃってるじゃないか」
「ありゃ、男が悪いよねぇ」
「ブキヨウなんだろう。旦那、がんばれ!」
「およしよ、全く! お嬢ちゃんは本気で怯えてるよ。かわいそうにね」
そんな野次馬達の言葉に晒されながら、非難の視線をいっせいに注がれた。
