『さようなら』
その一言が、何より胸に突き刺さった。
何故かしら、止めを刺された気がする。
確実な一撃をくらった気分の悪さにも匹敵するほどの、この威力は何なのだ。
(……夜露の魔女《カルヴィナ・ヴィチィズ》め)
夜露は朝日と共に消えたとでも言うのか。
「…………。」
「失礼ながら、エイメリィ様の足ではそう遠くへは行けないと思ったのですが……。どこにも姿が見当たらないという事は、外に出られたと考えた方がいいようです。森に戻られたかもしれないと思って、馬を飛ばさせました。何名かで捜索させ、一人は森の家に待機するようにと命じてあります。レオナル様?」
「ああ。ご苦労、リヒャエル」
いぶかしむ様に名を呼ばれ、意識を手紙から引き剥がす。
リヒャエルを見ると、そこには責めるような眼差しがあった。
「レオナル様、お覚悟を」
「何の覚悟が要るという?」
「色々とでございます」
ばか丁寧にそう告げられ、苦々しい想いでもう一度娘の書置きを見つめた。