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「いいなあ、レオナル」

 スレンがしみじみと呟いた。

「いいだろう」

「僕にだってジルエールがいるもんね。返してよ」

「もう少しいいだろう」

「もうだめ。僕が落ち着かないから返して。と、いうよりもそろそろ帰らなくちゃ」

「そうか」

「うん。またね」

 手放しがたい重みを名残惜しく感じながら、そっとスレンへと預ける。

 赤ん坊は大人しく、自分の指をしゃぶっている。

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「スレン」

「うん」

 リディアンナの話しでは、スレンはこれで自由になったはずだった。

 能力ある異類との婚姻の果てに、その血筋の者を得ること。

 それがかつての契約のひとつであったのだと、リディは教えてくれた。

 これでスレンは神殿に縛られる事も無くなる。

 身ごもった嬉しさと、スレンを失うという悲しみを打ち明けてくれた巫女王は、昔から知る姪っ子のままだった。

 だが、スレンはこうしてリディアンナと赤ん坊の側にいる。

「まったく。何が解放だよ。こんな宝を置いて誰が自由になんて飛んでいける?」

 俺の口に出さない疑問を、見透かしたようにスレンは答えた。

「やっぱり、最強の術者だよ。リルディ……リディアンナはさ!」